貧困研究会の発足に際して

2007年12月

貧困研究会の設立趣旨

貧困研究会準備会

 現代の日本社会では「貧困」が存在し続けたにもかかわらず、長い間この問題は社会的に不可視化され、まるでなくなったものであるかのように思われてきました。この事情は学問の世界でも同様です。「貧困」を対象とする研究や調査に従事する研究者が非常に少なく、また「貧困」をテーマに研究をする研究者の卵を育てる努力も不足していました。

 ところが、ここ数年日本社会は大きく変わりました。「貧困」が徐々に再発見されるようになったことは、その大きな変化のうちの一つにあげられるでしょう。研究者の間でも、野宿者の実態調査や社会的排除という新しい概念を使った研究など、「貧困」に関連した成果が徐々に見られるようになりました。とくにこうした調査研究が社会保障・社会福祉の分野だけではなく、労働・医療・法律・家族・住宅・地域政策など、さまざまな分野で展開され始めていることは注目すべきことです。

 この時にあたりわたしたちは、研究者を中心とした「貧困」に関する調査・研究を目的とする研究会を立ち上げるべく、準備を進めて参りました。この研究会では様々な分野の貧困に関心を持つ研究者を募り、学会や専門領域の枠を超えた「貧困」に関する研究の展開を図りたいと思っております。これまでも研究者の間では実は、医療、労働、法律、住宅、都市政策、女性、生活保護、社会福祉など様々な分野で、「貧困」に関係した研究が行われてきました。ところが、これらを横断的にまとめる機会が非常に少なかったと言えます。政策的にも、縦割りで調査・立案・実施がなされ、総合的で有効な対策をたてることができない状況にありました。

 わたしたちの研究会では、このような環境を改善し、より総合的な研究・調査や政策提言を行なうことを目標としています。またその際、先進国の「貧困の発見」「再発見」の経験とそれに基づく政治経済的な働きかけに学ぶとともに、とりわけ東アジアにおける貧困問題研究を行なっている団体や個人とも交流し、将来的には、日本における貧困研究のセンターの役割を果たしたいと考えています。研究会の活動は、主に次のようなことを予定しています。

1.毎年で研究報告会を開催し、各地の研究者による研究調査の発表・交流の機会を設けます。
2.分野横断的な研究者有志によって、「貧困」に関連した調査研究を実施していきます。
3.「貧困」をテーマにした学術雑誌を定期的に発行する予定です。具体的には今後検討します。
 

 皆様には研究会の趣旨をご理解いただき、会員としてご参加いただけますようお願い申し上げます。